コロナ後の観光を考える:レンタカー旅行で注意したい「意識のギャップ」

ポストコロナ時代の海外旅行において、非接触という点でレンタカー旅行者が増える可能性は十分考えられる。既にコロナ禍以前から、訪日リピーターの拡大に伴って自由なレンタカー旅行を好む外国人旅行者は増加傾向にあったが、その一方で、道路事情や交通マナーの相違から思わぬ事故を招くケースも散見されていた。

 

そこで、今回は「異国で運転するとはどういうことか」について、自身が外国人としてマレーシアで運転してきた経験をもとに、双方の意識の差を考察してみたい。

 

手を上げて横断歩道を渡るのは日本人だけ?

マレーシアは車社会、かつ、”車優先”社会だ。車が近付いてきたら歩行者は車が過ぎ去るのを待ってから道路を渡るのが当たり前になっていて、車が止まってくれるとは考えない。運転する側も当然歩行者に注意は払っているが、基本的には歩行者がよけることを前提にスピードを緩めて通過するといった具合だ。

 

私が暮らしていたのはクアラルンプール市内の中でも日本人や外国人の多い住宅街。ある時、自宅近くを運転中に信号待ちをしていたら、小学校低学年くらいの日本人男の子が、目の前の横断歩道を「手を上げて」渡り始めた。マレーシアの運転スタイルに慣れきっていた私は、一瞬「ん?あの子、どうしたんだろう?」、そして次の瞬間、日本の「手を上げて横断歩道を渡りましょう~」の標語が脳裏によみがえった。

 

この習慣は私の知る限り日本特有で、マレーシアでも他の国々でも一度も目にしたことがない。道路を渡っていた男の子はもしかしたら日本から引っ越してきて間もなったのかもしれない(それとも日本人学校でこの動作を教えているのだろうか?)。

 

幸いこれは歩行者用信号での出来事だったが、仮に信号がなかったらドライバーは「手を上げる」 動作を見ても何のこか理解できないし、「タクシーを探しているんだろう(=自分には関係ない)」くらいに考えてブレーキを踏まない可能性も大いに考えられる。

 

次に、 交差点における両国のちがいについて。 歩行者優先の日本だが、そのわりに歩車分離式のスクランブル交差点は決して多いとは言えない 。それゆえドライバーは 右左折時に十分な注意 を払うことが習慣づいている。

他方、マレーシアの場合、大きな交差点ではスクランブル方式が一般的なので、ドライバーは右左折した先に歩行者がいるとは思わずハンドルを切っている。

標識の国際基準:日本の表示は誤解されやすい?

レンタカー問題が浮上した数年前、日本の情報番組がこの件について取り上げていた。特に問題視されたのは「止まれ」の標識が外国人には“読めない”、“形状が誤解を招いている”という点だった。

 

 

例えば、国際的には「止まれ」は赤色の八角形が主流で、仮に文字が読めなくても運転手が直感的に理解しやすく統一されている。他方、日本の「止まれ」は国際的にはむしろ「Give Way(米国はYield)」といって“本線車両を優先せよ”を意味する標識に似ていて、このことが事故の要因の一つに挙げられる。

前述のTV番組では、レンタカー会社が「外国人ドライバーが運転しています」と書かれたステッカーを貼って、後続車に注意を促す対策を講じていて、良いアイデアだと大変勉強になった。

外国人のレンタカー利用を危険だ・迷惑だと問題視するよりも、リスク軽減に向けた取り組みを今から考えておく必要があるだろう。